まず、無関係みたいな刑法のお話
こんにちは。
今回は、ほんの少しだけ毛色の異なる切口から入って、題名のお話に繋げていければと思います。あくまでも補助線としてであって、刑法のテキストには建設業法の話など出てきませんし、反対もまた然りです。横断させてみたいというのは私の私見で試作です。
大学の法学部生の方であればご存知の話かもしれませんが、刑法には自由保障機能が存するとされています。いわゆる罪刑法定主義の文脈ですね。
法学部以外の人からすると、「刑法は自由を奪うのでは?例えば禁固刑でいうと、閉じ込められて身体の自由、移動の自由は剥奪されていないか?」と思うかもかもしれません。
たしかに、帰結をストレートに眺めるとそうですね。
でも、憲法学者・刑法学者がいうのは反射的な意味なのです。
皆が自由だと観念上教わっても、社会生活を、社会構成員全員が衝突せずに営むことは至難です。全員が野放図に動き回るのを想像してみてください。先鋭化すると、悲惨な事件も起こりえます。
そこで、国家が刑法という「最下限のライン」を線引きしてあげたと説明するわけです。
たしかに、上述のように、罪には罰が与えられます。が、この犯罪行為の型に当てはまらない限りにおいて、あなたは自由ですと。
その点を以て、刑法には自由保障機能がある、と言い表すんですね。
行政処分≠刑罰だけど…
そういった文脈において、行政処分を眺めると、似た側面があります。
上述の通り、大学の先生方はきちんと概念上で線引きなさっていて、建設業の健全な発展のために監督する目的でする処分は刑罰とは別物だとなっています。
いわば庭師の剪定作業に似て、育てるためのもので、罰じゃないと。
でも、処分次第では、経営が大打撃を受けかねない【あたかも財産刑に似ている】と思うからこそ皆が従うわけです。
萎縮が過ぎ、経済が止まっては元も子もないですけど…。適正な匙加減の劇薬の扱いが行政には求められるわけです。
反対に、処分に当てはまらない≒自由に行動可能だとみなして動ける面があります。
孫子のいう「彼を知り己を知れば百戦殆からず」の変形ではないですが、得体の知れない化け物みたいに処分を恐れずに、正しく恐れましょうという話です。
監督処分の種類は実は三つしかない
といっても、建設業法上のは、ですけど…。
つまり、他の法が規定している処分は別途存在します。
ただ、例えば多角経営などなさって、その別法の処分が問題になった場合にお調べください。メジャークラスに近づくと、独禁法違反に対して公正取引委員会が下す処分などがあります。同法19条などご参照ください。
しかし当面、建設業の経営上で見据えておくべき対象は下記三つです。
- 指示処分 【建設業法 第28条第1項、2項、4項】
- 営業停止処分 【同条第3項、5項】
- 許可取消処分 【同法第29条、第29条の2】
三つの処分の関係性
一口に申しますと、段階性でしょうか…。
「不正行為、違法行為等があります。是正してください」という形で出すのが指示処分と位置付けられています。
何度か警告して馬耳東風だった場合、一段階上がって、1年間を上限とした営業停止が命ぜられます。なかなか耐久性を求められる処分ですね…。
最後の段階まで行ってしまうと、この人、またはこの会社は、「当初、建設業許可に値すると思って許可を出したんだけど、見込み違いだった」ということで、許可取消処分が出されることがある…そういう段階性があります。
※ ただ、必ず段階順とは限らないそうです。一見して悪質な場合【いわゆる故意・重過失】はいきなり営業停止処分・取消処分もありうるみたいです…。
国交省の基準公開だと、現行pdf【5月26日改正】の4ページ目、末尾辺りに、「基本的考え方」として、「だいたいは28条1項各号で対応できるが、その他もある」という大別が示されています。
そして、各文末の「…を用いるものとする…」とある実現手段は、だいたい、上記3つ併記したうちの、指示処分か営業停止処分の文字です。
また、上記にて、行政処分は、刑法のいう刑罰と別物だと申しましたが、悪質行為が同時に刑法に合致している場合は当然起こり得ますので、その場合は別途訴追だとか、訴追がなくとも罰則規定適用があり得ます。
おまけ
監督処分は監督省庁が出すものですが、後始末も残存していきます。
具体的には、建設業者監督処分簿というものがあって、5年間登載されていくのだそうです。
【他業種も含めたご参考】
「本サイトについて」にも、一応、ペナルティとしてじゃない!って書いてあります…。